Microsoft Dynamics NAVで実現したカスタマイズされた柔軟性と部門コストの優位性で、高級オーダーメイドブランドアパレルの独自経営方式をサポートし、将来のニーズに合わせて一緒に成長
SHIATZY CHEN、国際化経営の布石にERPで経営効率を最適化
顧客紹介
1978年に台北で誕生したSHIATZY CHENは、西洋最先端の巧妙な技術と東洋のきめ細やかなデザインとの融合が特色で、年月に風化されない価値を生み出したファッションブランドです。そのコレクションには全身を包むスタイルのウィメンズと自由なテイストのメンズ、皮小物、靴、アクセサリーのほか、2003年には新しくインテリアグッズとアジアンフェスティバルなどのシリーズが加わりました。
SHIATZY CHENは2008年に初めてパリコレに出展し、今まで「堅瓷」、「詩路」、「心畫」、「玨心」、「渲影」、「錦縏」、「鎖雲」などをシリーズのテーマとして発表し、国際舞台に躍り出ました。現在のところヨーロッパとアジアに直営店18店とデパートの売り場40カ所を含む 58カ所のデパートの販売拠点があります。
2009年、SHIATZY CHENは新しくエンタープライズリソースプランニング(Enterprise Resource Planning;ERP)システムの導入を決定しました。さらに国際化企業としての経営パターンの布石として、同じく国際的に有名なブランドであるMicrosoft Dynamics NAVを選択しました。2011年初めの第1フェーズの稼働作業以来、効率化や統合において、具体的な著しい効果を見せています。
問題の状況
- 外部委託で開発された旧式の基幹システムには統合性が欠けていて、サポートのために多くの手作業が必要。
- SHIATZY CHENの運営特徴は一般的な大量生産されるアパレルとは違い、システムの柔軟性とカスタマイズのサポートが必須。
産業の特性に対するサポートを最優先に考慮
設立から30年以上になるSHIATZY CHENは、他の多くの企業と同様、古いシステムで起こる数々の問題に直面せざるを得ませんでした。 当初の旧システムは外部委託された開発プログラムで、多くの業務は国際的な企業と比較できるものではなく、淘汰するか再統合を考える時期になっていました。
システムの再統合を決めた後、SHIATZY CHENはすぐにベンダーの検討を始めましたが、柔軟性と機能性を考慮し、最終的に繊維産業を専門とするヨーロッパ系のシステムを選びました。このソリューションはMicrosoft Dynamics NAVをプラットフォームとしたものだったので、台湾Microsoft のMCS(Microsoft Consulting Services)チームに協力を依頼しました。
ところが導入の過程でヨーロッパのシステム会社が破産宣告をしてしまいました。SHIATZY CHENは後継サポートと互換性などのリスクを評価後、元の会社は採用しないものの引き続きMicrosoft Dynamics NAVを採用することにして、直接プラットフォームに必要な開発をするソリューションにしました。そこでK&S Informが導入とカスタマイズに協力するパートナーとなり、構成もまた大きく変更されました。
「その他国際ブランドのERPシステムの製品は考慮に入れられませんでした。私たちにとって構造が大きすぎ、コストも高く、導入時間も長いですし、しかもカスタマイズが難しい。それに比べてMicrosoft Dynamics NAVは私たちのニーズに合うものでした。」SHIATZY CHENの范居正協理はこう言います。
現在の市場のアパレル産業向けに設計されたITソリューションを見ると、それらのほとんどはOEM / ODMのビジネスモデルをターゲットにしています。作業プロセスから見ると、最初に設計を行い、部品表(BOM)を分析してから材料を調達し、生産に入ります。
しかしこれはSHIATZY CHENというファッションブランドを経営し、高級オーダーメイド服を作る経営パターンとは明らかに違います。特に、最大の違いは材料を仕入れる時間が設計より早いことです。例えば2011年秋冬に発注して仕入れるのは、2012年に必要な布地であり、メーカーはSHIATZY CHENの希望に基づいてカスタマイズ開発をし、デザイナーは必ずこれらの布地屋材料、模様をもとにしてデザインをしなければなりません。
もう一つの課題は外注先の管理です。求人広告から求めるレベルの職人を見つけるのは難しいため、SHIATZY CHENでは自社工場内生産と外注先OEMを並行しており、固定で九十人の職人と提携し、プロジェクトの形で運営しています。このように、進行をコントロールするのが難しく、工場管理の範疇を超えています。
このような複雑で変化の多い操作方式ではシステムの能力が及ぶところを超えていたため、SHIATZY CHENはERPの目標を補助ツールとしました。第1フェーズの稼働目標をデータの統合に決め、従業員がデータを検索、アクセス、照合したい時に、効率と利便性を感じられるようにしました。また作業プロセスの統合とデータの応用分析を第2フェーズの目標とし、段階的に進めることで大きな変化が業務に負担を与えないよう配慮しました。
月次決算が30日も短縮、素早いデータ検索を初めて体験
SHIATZY CHENの当初のIT環境では外部委託によって開発された基幹システムのほか、電子署名機能を持つフローシステムを使っていました。しかしこのフローシステムはデザイン、型作り、サンプル作りまでの前半の作業にのみ対応し、後半部分の生産作業及び会計事務のニーズをサポートしていませんでした。
Microsoft Dynamics NAVの稼働でこれらの古いシステムは一気に置き換えられました。古い基幹システムでは調達、資材、税関申告など、Microsoft Dynamics NAV上で処理できるよう機能と操作のコンテンツの90%が変更されています。「第1フェーズの稼働での効果は、主にデータ処理とデータ交換の合理化、それから作業効率の向上です。」范居正協理はそう説明します。
たとえば、材料モジュールの決済費用勘定と余剰材料の月間決済時間が元の45日から15日に短縮されました。 以前は起票と購買データとの連携が取れておらず、月次決算ごとにデータ探しに時間を取られた上、手作業で逐一分析照合をしていましたが、現在は月頭に先月1ヶ月分のデータをもとに、数量と会計作業を一度に再整理するだけで事足ります。
このほか、以前ユーザーは数値あるいはカスタマイズされたレポートを得るためにはIT部門の協力が必要でしたが、現在では自分でデータにアクセスし、Microsoft Officeシリーズのツールで表を作成できます。大量データの検索のレスポンスまでも、旧システムでは2分から5分も必要だったところが現在では秒単位で計算できるほど速くなりました。
ERPシステムの統合により、過去独立していた会計システムの手動起票方法も変更され、すべてのモジュール文書を直接起票および転記することができるようになりました。開発管理業務に関しては、過去の材料購入日、瑕疵数量、検査後の正味量を含む完全な情報が異なるシステムに分散されていたため、システムを跨いでチェックするか、IT部門に代理で検査するよう委託する必要がありましたが、今では完全に一元化して一つのインターフェースで実行できます。
重要な材料モジュールも大幅に強化されました。以前は翌月の出荷を入力するために棚卸し作業を完了する必要があったのが、オンタイムでドキュメントを入力すれば、在庫が正しく反映できるようになりました。BOMの統合と生産オーダーの材料消耗の自動計算に関しては、以前はオフラインのExcelフォームで計算されていました。今ではシステムが自動的に残高を計算し、残余材料も自動的に倉庫管理データに反映されます。
手動会計、署名記録、手動重複データ入力、一部文書の手書き作業など、主に手動であった生産管理作業はすべて、ERP生産管理モジュールに受け継がれ、システムはリアルタイムで会計と表示データの統合を実行し、前例のない効率を実現しました。たとえば、セクションごとにアウトソーシングされた作業を送信する場合、さまざまなデータを重複して入力する必要があるのに、貨物番号と数量のデバッグ機制もありませんでしたが、ERPでは、文書の複製とリストのクイックチェックで、ミス防止の効果を達成しました。
プロセス統合の第2フェーズ、BIアプリケーション活用の第3フェーズに向けて
2012年2月に開始するオンライン運用の第2フェーズでは、店舗販売のPOSシステムと工場で稼働するERPシステムとの統合、中国本土でのオンライン運用、 リエンジニアリング(ビジネスプロセスリエンジニアリング、BPR)を実現する予定です。
その中でも、BPRは部門業績指標評価(KPI)と密接に関連しており、ERPを具体的に実現できるプラットフォームとして使用したいと考えています。 例として、材料出庫登録があります。現在のピッキングおよび材料出庫操作は手動で登録されます。共有材料の品目と数量は非常に複雑であるため、購買部門は多くの場合、誰が材料と数量を使用したかを知ることができません。 データをリアルタイムで正確に反応させることはできませんが、将来的には、関連情報をすべてERPシステムに登録できることを望んでいます。
長期的な第3フェーズの目標としては、ビジネスインテリジェンス(BI)アプリケーションに焦点を当て、経営者及び上級幹部に意思決定のサポートと分析を提供する予定です。現在、POSシステム自体に分析ツールがあり、台北本部ではすべてのグローバル拠点の販売情報を取得できますが、ERPが把握するコスト情報は依然不足しています。売上情報とコストデータを組み合わせることができれば、収益性の低い品目や在庫不足の商品などより多くの情報を提供でき、多面的な意思決定の根拠となるでしょう。
特筆すべきはSHIATZY CHENはK&S Informのパフォーマンスを高く評価しており、第2フェーズの稼働作業の依頼も引き続き予定しています。「伝統的な産業ではERPパッケージソフトの標準機能とフローを直接使用できません。しかもそれぞれの専門技術と知識もあり、ERPを導入する行程で様々な挑戦があるでしょう。ですからパートナーの品質がアプリケーション本体以上に重要になります。リソースの余裕、サービスと技術の専門性、そして技術移転後のアフターサポートも考慮に入れてこそ、ERPの導入と稼働が成功する基礎となるのです」范居正協理はこのように指摘しています。